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トピックスの最近のブログ記事

2014.05.20 47NEWSより


 膝や股関節の人工関節置換術に用いられる骨セメントに、抗菌薬(ゲンタマイシン)を含有した製品「Cobalt G―HV ボーンセメント」をバイオメット・ジャパン (本社東京)が発売した。海外では既に抗菌薬入りのセメントが広く使われているが、国内では初めてだという。
 骨セメントは骨と人工関節を固定するために使われる。これまでは感染予防のため、医療現場で抗菌薬を混ぜることがあったが、混合する際の気泡混入による強度低下や、手術スタッフの作業負担が指摘されていた。
 日本では年間約12万8千人(2012年)に人工関節置換術が実施されており、高齢化に伴い増加傾向が続いている。

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人工関節の感染は、術後何年経過しても心配事のひとつですよね
少しでも安心して生活が送れるようになればよいですね

2014/5/12 23:55 情報元 日本経済新聞 電子版 記事保存

 人工関節メーカーのナカシマメディカル(岡山市)は、人工関節の耐久性を従来の1.5倍の30年以上に延ばす素材を開発した。樹脂にナノテクノロジー(超微細技術)素材のカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を混ぜた。人工関節が摩耗したり割れたりする劣化が起こりにくくなった。マウスなどで安全性を確かめ、2年後をめどに臨床試験(治験)を始めたい考えだ。


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耐久30年となると、入れ替えが必要なくなるかも!?
若年の患者にとっては朗報ですよね

QLifePro医療ニュースより


2014年5月より発売

バイオメット・ジャパン株式会社は4月14日、人工関節置換術に用いる骨セメントに、日本で初めてとなるゲンタマイシン(抗菌薬)を含有した「Cobalt G‐HV ボーンセメント」の日本国内の販売を、2014年5月より開始すると発表した。


人工関節置換術では、気泡混入による強度低下や手術スタッフの負担といった問題が指摘されつつも、感染予防を目的として骨セメントに抗菌薬を混ぜて骨と人工関節を固定するために使用されることがある。

海外では既に抗菌薬入り骨セメント(ALAC)が広く使用されており、国内での抗菌薬入り骨セメントの発売は多くの整形外科医から望まれていた。

抗菌スペクトラムの広いゲンタマイシンを含有

視認性と操作性に優れた骨と人工関節を固定するために用いられる骨セメントで、整形外科医から高い評価を得ている「Cobalt HV ボーンセメント」に、ゲンタマイシンを含有させたものが今回発売となるCobalt G‐HV ボーンセメント。問題となる強度も、Cobalt HV ボーンセメントとほぼ同等程度を保っているという。

人工関節置換術を行った患者が感染症を発症すると、時には埋稙した人工関節を取り出し、数カ月単位で感染症治療を行った後に、改めて人工関節置換術を行う必要があるなど、その負担は非常に重いものとなる。感染症対策がなされたCobalt G‐HV ボーンセメントの登場は、患者負担軽減のための新たな選択肢として期待される。

健康美容EXPOニュースより

社会の高齢化に伴い、人工股関節置換術を必要とする高齢者がますます増えると考えられるが、手術は何歳まで可能なのだろうか。

米カイザー・パーマネンテ(ロサンゼルス)の整形外科医Alexander Miric氏が率いた新たな研究で、90歳以上の患者183人と、90歳未満の患者4万3,000人強に実施した股関節置換術を比較した結果、同等の成果が認められたという。この知見は、米ニューオーリンズで開催された米国整形外科学会(AAOS)年次集会で発表された。股関節置換術は1960年から実施されており、米国医療研究品質局(AHRQ)によると、米国では年間約28万5,000件の人工股関節全置換術が実施されているという。

今回の研究では、関節全置換術の登録簿から収集したデータを用い、2001年4月から2011年12月までに実施された股関節置換術について分析。80歳未満、80?89歳、90歳以上の3つの年齢層について、入院期間の長さ、術後の合併症、死亡率および術後90日間の再入院率を比較した。深部静脈血栓症のみられた患者は90歳以上ではおらず、80?89歳では1.2%、80歳未満では1%未満だった。90歳以上の感染症の比率には80歳未満との差はみられなかったという。

90歳以上では入院期間がやや長く、平均3.4日だったのに対し、80歳未満では2.8日、80?89歳では3.3日だった。また、90歳以上では術後3カ月以内の再入院率が高かったほか、90日以内の死亡率が最も高く、2.7%だったのに対し、80?89歳では1.3%、80歳未満では0.2%だった。Miric氏は、90代の股関節置換術は見通しが明るく、90代であっても外科医と話し合い(手術の実施を)検討すべきだと述べている。

米ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)教授のCraig Della Valle氏は、この結果は意外なものではないと述べている。同氏は、「90歳まで生き、関節炎に悩むほど健康であるということは、活動的で選択的手術にも耐えられることを意味する」と述べる一方、徹底的な術前評価を行い、手術に適格であることを確認する必要があると警告している。また、今回の研究で90代に認められた2.7%という死亡率は高いように思えるとの同氏の指摘に対し、Miric氏は、90歳以上での1年以内の死亡率は一般には約20%だが、今回の研究では90歳以上の集団の1年以内の死亡率は5.5%だったと述べている。

なお、この研究は学会発表されたもので、データおよび結論はピアレビューを受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。(HealthDay News 3月11日)

10月10日 QLife Proより

4臨床的対応、死亡率減少と関連あり

後方アプローチによる手技、術後の機械的血栓予防または化学的血栓予防、脊髄麻酔の実践が広く普及することで、変形性関節症の治療における人工股関節置換術後90日以内の死亡が低減する可能性が示唆された。

英国ブリストル大学のアシュレー・W・ブロム(Ashley W Blom, PhD)氏らによって行われた研究報告が、28日の電子版ランセット(The Lancet)誌に掲載された。

装具の違い、死亡率と関連なし

術前および術後に死亡低減の要因があるか否かを評価分析するために、患者登録システムであるナショナル・ジョイント・レジストリ(NJR: National Joint Registry)、全国死亡データベース(national mortality database)、病院統計データベース(HES: Hospital Episode Statistics database)から、2003年4月から2011年12月までのイングランドとウェールズにおける症例および死亡データが得られた。

人工股関節置換術409,096例と、90日以内の死亡1,743例について、カプラン・マイヤー分析法とコックス比例ハザードモデルを用いて評価した結果、死亡率の減少との相関が得られた臨床的対応と調整ハザード比は次の通りとなった。

後方アプローチによる手技(0.82、95% CI 0.73?0.92、p=0.001)、術後の機械的血栓予防(0.85、0.74?0.99、p=0.036)、術後のヘパリン投与(アスピリン併用投与あるいは非併用)による血栓予防(0.79、0.66?0.93、p=0.005)、脊髄麻酔(対全身麻酔0.85, 0.74?0.97、p=0.019)。

装具の違いと死亡率との間に、関連はみられなかった

2013. 9. 5

Ann Intern Med誌から
関節置換術後の新規抗凝固薬に低分子ヘパリンを上回る利益はあるか
米国で行われたシステマティックレビューの結果


人工股関節全置換術(THR)または人工膝関節全置換術(TKR)後の静脈血栓塞栓症の予防目的で使われる低分子ヘパリン(LMWH)と、近年登場した新しい抗凝固薬の有効性、安全性を比較したところ、症候性深部静脈血栓症の予防において新規抗凝固薬の利益は高いが、出血リスクも高い傾向が見られた。米Duke大学のSoheir S. Adam氏らによるシステマティックレビューの結果で、論文はAnnals of Internal Medicine誌2013年8月20日号に掲載された。

 血栓予防を目的とする抗凝固療法は、THRまたはTKRを受けた患者の静脈血栓塞栓症のリスクを低減するが、大出血リスクを上昇させる可能性がある。したがって、血栓予防効果がより高く、出血リスクはより低い薬剤を選択することが望ましい。

 THRまたはTKRを受けた患者に広く用いられてきたのはLMWH、フォンダパリヌクス、ワルファリンだ。このほかに、未分画ヘパリン、アスピリンが適用されることもある。LMWHの有効性と安全性を示したデータは十分にある。

 近年、新規経口抗凝固薬(直接トロンビン阻害薬、経口第Xa因子阻害薬など)も血栓予防の選択肢となった。著者らは、米退役軍人省の依頼を受け、THRまたはTKRを受けた患者に新規抗凝固薬を適用した場合の利益とリスクを標準的な抗凝固療法と比較するためのシステマティックレビューを行った。

 MEDLINE、EMBASE、コクランシステマティックレビューデータベースに09年1月?13年3月に登録された研究から質の高いシステマティックレビューを探し、THRまたはTKRを受けた患者に対する新規抗凝固薬の血栓予防効果をLMWHと比較した6件のレビューを分析対象とした。新規抗凝固薬とワルファリン、アスピリン、未分画ヘパリンを比較した質の高いレビューは見つからなかった。

 6件中2件は薬剤クラス間の比較(例えば第Xa因子阻害薬とLMWHの比較など)を行っており、4件は個々の薬剤を比較していた。全てのレビューが直接比較を行っており、2件はそれに加えて間接比較も行っていた。5件は同一の定義を用いて大出血に関する分析を実施していた。

 Neumann氏らのシステマティックレビューは、22件のランダム化比較試験(3万2159人を登録)を分析対象とし、第Xa因子阻害薬(アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン、YM150、LY1517717、TAK442、razaxaban、betrixaban)とLMWHを比較していた。エビデンス強度の高い試験では、第Xa因子阻害薬とLMWHで全死因死亡と非致死的肺塞栓症への影響に有意差を認めなかったが、症候性深部静脈血栓症のリスクは、LMWHに比べ第Xa因子阻害薬の方が1000人当たり4人(95%信頼区間3-6)少なかった。オッズ比は0.46(0.30-0.70)で差は有意だった。大出血を報告していた研究のエビデンス強度は中等度だった。第Xa因子阻害薬の方がLMWHより1000人当たり2人(0-4)多く大出血を経験する傾向が見られた(オッズ比1.27、0.98-1.65)。

 第Xa因子阻害薬とLMWHを比較した他の系統的レビューでも、同様の結果が得られた。

 経口直接トロンビン阻害薬のダビガトランとLMWHを比較していたレビューは4件あり、症候性深部静脈血栓症リスク、肺塞栓症リスクはLMWHに比べダビガトランの方が低下傾向を示したが、有意差は見られなかった(エビデンス強度はいずれも低)。大出血のリスクに上昇傾向は見られなかった(エビデンス強度は中等度)。

新規抗凝固薬の直接比較は行われていなかったが、LMWHのエノキサパリンと新規抗凝固薬の比較で得られたデータを利用して間接比較が行われていた。第Xa因子阻害薬間の間接比較では、症候性深部静脈血栓症リスクは、ダビガトランに比べてリバーロキサバンの方が低い(リスク比0.68、0.21-2.23)傾向が見られ、アピキサバンとリバーロキサバンの比較でもリバーロキサバンの方がリスク低下傾向が見られた(0.59、0.26-1.33)。ダビガトランに対するアピキサバンのリスク比は1.16(0.31-4.28)だった。一方、大出血リスクは、アピキサバンに比べてリバーロキサバンの方が高くなる傾向が見られた(リスク比1.59、0.84-3.02)。ダビガトランに対するリバーロキサバンのリスク比は1.37(0.21-2.23)、ダビガトランに対するアピキサバンのリスク比は1.16(0.31-4.28)で、いずれもリスク上昇傾向を示した。間接比較のエビデンス強度は全て低かった。

 新規抗凝固薬はTHRとTKRを受けた患者の血栓予防において有効だが、LMWHを上回る臨床上の利益はわずかで、大出血リスクの上昇により相殺されるレベルだった。著者らは、新規抗凝固薬は選択肢の一つになるが、出血リスクが上昇している患者への適用には注意が必要だと述べている。

MTPro [2013年4月11日(VOL.46 NO.15) p.01]

〔シカゴ〕南カリフォルニア・カイザーパーマネンテ医療グループ(カリフォルニア州サンディエゴ)のMaria C. S. Inacio博士らは,人工股関節全置換術(THA)後の再置換術に関する性差を検討した結果,「男性に比べて女性では,患者背景や術式,執刀医,手術件数,インプラントに関連した危険因子で調整後の不具合の発生リスクが高く,再置換術の施行が多いことが分かった」とJAMA Internal Medicine(2013; 173: 435-441)に発表した。

女性で有意に低いインプラントの5年耐久率

 Inacio博士らは今回の研究で,2001年4月〜10年12月に全関節置換術登録に登録された患者からTHA施行患者3万5,140例を同定し,術後短期の再置換リスクと性との関連を検討。対象患者の平均年齢は約65.7歳,女性比率は57.5%であった。

 今回の大規模解析では,46施設における多様なTHA症例のデータが用いられた。追跡期間は中央値3.0年であった。

 検討の結果,全原因による再置換率と感染以外の原因による再置換率は男性に比べて女性で高かったが〔それぞれ,調整後のハザード比(HR)1.29,1.32〕,感染による再置換率(HR 1.17)に男女差は認められなかった。

 インプラントの選択に関しては,骨頭径28mmの使用は女性に多く(女性28.2%,男性13.1%),骨頭径36mm以上の利用は男性に多かった(女性32.8%,男性55.4%)。また,高度架橋ポリエチレンを用いたインプラント(金属ヘッド使用)は女性に多く(女性60.6%,男性53.7%),金属ソケットと金属ヘッドの組み合わせは男性に多かった(女性9.6%,男性19.4%)。

 5年追跡時点でのインプラントの耐久率は97.4%で,女性の耐久率(97.1%)は男性の耐久率(97.7%)と比べて有意に低かった(P=0.01)。

 同博士は「THA後の患者管理とインプラントの改良においては,術後のインプラントの不具合と性差との関連が重要であることが示された」と指摘している。

MTPro [2013年1月24日(VOL.46 NO.4) p.03]

〔ロンドン〕ブリストル大学(ブリストル)臨床科学部整形外科のAshley W. Blom教授らの研究グループは「従来の人工股関節全置換術(THR)の代替療法として若年患者に推奨されることの多い表面置換型人工股関節置換術(以下,表面置換術)は,術後早期に再手術が必要となることが多く,特に女性には施行すべきではない」とする観察研究の結果をLancet(2012; 380: 1759-1766)に発表した。

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表面置換型人工股関節置換術は、標準型人工股関節に比べて、
●大腿骨の骨自体が従来型に比べて温存される
●今までの報告では手術後の脱臼がない
●大腿骨コンポーネントの再置換が従来型より容易である
などの利点があります。
欠点としては、
●10年以上の臨床成績が発表されていない
●脚長補正が難しい
●骨盤や大腿骨に強い変形がある場合は不適
●大腿骨頚部骨折の発生率0?4%
●体内金属イオンの増加
などがあげられるそうです。

骨切り手術によっても股関節痛が軽快しにくい病期が進行した若い方や手術後も活動的な生活を希望される方々に対しては、適応があるのではということなのですが、術後早い時期に再手術が必要となることがあるというのは、社会活動を行っている(仕事をしている)年代にとってはネックになる問題だと思われますね。

入れ替え必須の若年人工関節患者には、うれしいニュースですね!


日刊工業新聞 平成25年1月10日 より

大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授と同大学院医学系研究科の吉川秀樹教授は、ナカシマメディカル(岡山市東区、中島義雄社長、086・279・6278)と共同で、低弾性と高衝撃吸収性を兼ね備えた人工股関節を開発した。電子ビーム積層造形法(用語参照)を用い、実際の生体骨に近い機能を実現した。従来の人工関節で課題となっている骨と金属の弾性率差に起因する骨の劣化を防ぐ。高齢化社会の到来で患者数が増える変形性関節症や骨粗しょう症などの治療に役立つと期待される。
 中野教授らは不要な金属粉末を取り除き、造形体骨格だけを使う積層造形法の発想を転換した。本来除去すべき金属粉末を造形体の中に閉じ込め、熱処理を施した。これにより粉末間のネック形成で、衝撃吸収性が備わる。同時に生体骨が持つ一軸異方性を発揮できる設計で骨類似化を図ったところ、弾性率の上昇を抑制できたという。

生涯型人工股関節が医療現場へ

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東京大学のページより
従来型の人工関節が磨耗し入れ替えなければならないことの原理や、生涯型人工関節について、学ぶことが出来ます。

人体に人工物が入ることのデメリットですね
現段階ではやむを得ず受け入れるより他はありません
例えばですが、iPS細胞の研究が進むと自骨と代謝できるようなインプラントが作られるようになるのでしょうか・・・


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2011/08/03
従来型人工股関節の限界
骨折や変形性関節症などで機能を失ってしまった関節の治療には人工関節への入れ換えが有効です。手術件数は、国内で年間17万件、世界では430万件を超え、年々増加しています。中でも人工股関節は実用化から約50年にわたり、多くの人を痛みや歩行障害から救ってきました。


人工股関節の構造
しかし、人工股関節には深刻な問題があります。使用しているうちに人工股関節のまわりの骨が消失してしまうことがあるのです。そのような場合、新しいものに入れ換える再置換術が必要です。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

人工股関節の関節面は、大腿骨側に固定される球状の骨頭と、骨盤側に固定されるポリエチレンライナーの組み合わせでできています。

しばらく使用すると、ライナーと骨頭の接触面からポリエチレンの摩耗粉が生じます。すると、生体の免疫システムを担うマクロファージという細胞が、この摩耗粉を異物と認識して取りこみます。その際に、破骨細胞という細胞を活性化して周囲の骨を消失させてしまうことがあるのです。

硬いポリエチレンの開発や代替材料など、ライナーの基材に関する研究が世界中で行われましたが、決定的な解決には至っていませんでした。

医工連携のきっかけは新聞記事
骨が消失した部分に再び人工股関節を入れる再置換術は、非常に難度が高い手術です。また、回を追うごとに術後のリハビリや入院は長期化し、経済的負担は言うまでもなく、患者の肉体的・精神的負担も増大するばかりです。このため、少しでも長持ちする人工股関節の開発が求められていました。


細胞膜を模倣した新しいバイオマテリアル「MPCポリマー」
1999年、医学系研究科の茂呂徹特任准教授は、1人の患者から新聞記事を見せられました。同じ東京大学の工学系研究科石原一彦教授による「2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー」という材料の研究成果に関する記事です。見出しには「人工関節にも応用」とありました。

とにかく話を聞きに行こうと、医学系研究科の高取吉雄特任教授と茂呂特任准教授、医学部附属病院整形外科脊椎外科の川口浩准教授は、すぐに石原教授を訪ねました。

細胞膜に近い「MPCポリマー」
石原教授は、生体内で異物と認識されない生体親和性の高い材料、バイオマテリアルの研究者です。体に埋め込む医用材料の場合、血液凝固や炎症反応などの生体反応を生じるものは使うことができません。石原教授が注目したのは細胞膜でした。

細胞膜は脂質の二重膜でできていて、その表面には親水性の基であるホスホリルコリン(PC)基が集まっています。

石原教授が大量合成法を開発したMPCポリマーもPC基を持つ材料です。MPCポリマーで表面処理したプラスチック板は、濡らすと表面に水を含み、ぬめりを感じるほど滑らか。まるでドジョウを触っているようです。

細胞膜に非常に近い組成を持つMPCポリマーで表面処理すると、材料は生体反応を引き起こしません。すでに人工心臓など数々の医療機器がこのポリマーの恩恵に浴しています。

軟骨の構造を真似する

生体の関節軟骨と新しい人工股関節の表面

15年分に相当する歩行シミュレーションによる摩耗の比較

微粒子をマウス骨表面に移植したときの破骨細胞の形成と骨吸収の様子(©2004 Nature Material 許可を得て複製 ) MPCポリマー処理された微粒子では、破骨細胞が形成・活性化がされず、骨吸収(骨の消失)が起こらない
関節を覆う軟骨の表面には、リン脂質が集まって表面を滑らかにしています。そこで、MPCポリマーを人工股関節の関節面に用い、軟骨の表面構造を構築するという発想が生まれました。

「表面処理というアイデア。これが画期的でした」と高取特任教授は言います。

医療機器メーカーも加わり、工学・医学・企業の壁を越えた連携による新しい人工股関節の開発が始まりました。

軟骨では、リン脂質を持つポリマーがひげのように表面に結合しています。そこで研究グループは、この構造を再現することを目指し、光グラフト重合という手法でMPCポリマーのひげをポリエチレンに生やすことにしました。


生体を模倣した新しい人工股関節は、予想以上の低摩擦を実現しています。親水性のPC基を持つMPCポリマーのひげが水を引き付け、ポリエチレンと骨頭の間に水の層が作られるのです。そのためライナーの摩擦係数が驚異的に下がりました。例えば15年分に相当する1500万歩を超えた歩行シミュレーションを行っても、ライナーはほとんど摩耗しません。2011年現在、歩行シミュレーションは70年に相当する7000万歩を超えましたが、大きな摩耗は起こっていません。

またMPCポリマーは生体親和性が高いため、仮に摩耗しても、微粒子が破骨細胞を活性化することがありません。長寿命が期待できる人工股関節の完成です。

実験室の技術が患者さんに届くまで
“患者さん側から『これを使ってください』と指定していただける製品になるのではないかと期待しています”
医学系研究科・茂呂特任准教授
医療機器開発のゴールは実際の治療に役立つことです。製品化までにはシミュレーター試験や治験など、数多くのハードルがありました。

「大学が作るのは、例えるならお金も時間もかけてよいF1マシーン。会社はその技術を使って大衆車を作らなくてはいけないのです」と石原教授。

実験室の技術をいかに製品化するか。医療機器メーカーである日本メディカルマテリアル社の京本政之さんは、医学系研究科と工学系研究科の両方に机を置いて開発に取り組みました。「先生は大衆車とおっしゃいましたが、そのなかでも高級スポーツ車くらいのものを作らないといけないのです」と京本さんは言います。体内に埋め込む人工股関節は医療機器の中でもハイスペック。医学的要求と工学的技術を結びつけ、高い信頼性・生産性・機能性を同時に満たすことを目指した高度な開発が行われました。

「実験結果が出るとすぐに議論できる。工学部と医学部が同じキャンパスにいる近さが鍵でした」と石原教授は言います。

分野の垣根を越えた共同研究の成果が、ついに医療の現場に届きます。才能と情熱が出会い、新しいアイデアや成果が生まれる場所。それが東京大学です。

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研究者情報
石原 一彦 教授 (大学院工学系研究科・工学部 マテリアル工学専攻 バイオエンジニアリング専攻)
京本 政之 研究員(大学院工学系研究科・工学部 マテリアル工学専攻/ 大学院医学系研究科・医学部 関節機能再建学講座 / 日本メディカルマテリアル株式会社)
高取 吉雄 特任教授 (大学院医学系研究科・医学部 関節機能再建学講座)
茂呂 徹 特任准教授 (大学院医学系研究科・医学部 関節機能再建学講座)