舌下免疫療法を処方するスギ花粉症患者はどんなタイプ?

MTProより
小社では毎年,花粉症の症状や診療の実態について調査を実施している。今回は10月に発売となった舌下免疫療法薬に着目し,適正使用のための講習会を受講,あるいは受講予定の耳鼻咽喉科および内科系のMT Pro医師会員を対象に行った。調査結果から,問題となる症状,喘息・通年性アレルギー性鼻炎合併例の診療,舌下免疫療法については処方する花粉症患者のタイプ,処方の際に懸念される点,同療法を長期継続させる工夫などについて概説する。

三大症状以外で問題は眼の痒み

 アンケートは,MT Pro医師会員のうち耳鼻咽喉科および内科系診療科の医師を対象に2014年9月10~16日に実施した。回答が得られたのは157人で,耳鼻咽喉科は90人,内科系67人,舌下免疫療法講習会を既に受講していたのは81人,今後受講する予定は53人であった。

 調査結果から,症状に関する回答を見ると(複数回答),耳鼻咽喉科,内科系とも三大症状〔くしゃみ,鼻水(鼻汁),鼻詰まり(鼻閉)〕および眼の痒みが8割以上であった。眼の充血,喉の痒み,咳,全身のだるさ・倦怠感,鼻閉などで熟睡できない,集中力の低下などの回答も多かった。三大症状以外では,眼の痒みが最も多く,耳鼻咽喉科,内科系とも3割が「喉の痒み」,「咳」を挙げ,「鼻詰まりで熟睡できない」は耳鼻咽喉科で4割であった
喘息・通年性アレルギー性鼻炎を合併する患者に関しては,喘息合併例では鼻閉は耳鼻咽喉科が8割と内科系の6割に比べて多く,咳は内科系8割と耳鼻咽喉科の6割に比べて多い。通年性アレルギー性鼻炎合併例では咳は耳鼻咽喉科,内科系とも少なかった(それぞれ13.3%,17.9%)。

 その他のアレルギー疾患合併例では,三大症状は喘息合併例や通年性アレルギー性鼻炎合併例に比べて少なく,喉の痒みは通年性アレルギー性鼻炎合併例に比べて多かった。

喘息合併花粉症患者への主薬は抗ロイコトリエン薬

 飛散シーズン前または飛散開始時に実施する初期療法に関しては(数複数回答),第2世代抗ヒスタミン薬が9割であった。飛散シーズン中における中等症以上の患者への治療薬の処方状況を見ると,くしゃみ・鼻漏型では,第2世代抗ヒスタミン薬+ロイコトリエン受容体拮抗薬(以下,抗ロイコトリエン薬)+鼻噴霧ステロイド薬の3剤併用が耳鼻咽喉科では4割と最も多く,次いで第2世代抗ヒスタミン薬+鼻噴霧ステロイド薬の2剤併用など,内科系では2剤併用が最も多かった。

 一方,鼻閉型または鼻閉を主とする充全型では,3剤併用が耳鼻咽喉科,内科系とも約半数で,主薬を抗ロイコトリエン薬や鼻噴霧ステロイド薬とする回答が多くなっていた。

 喘息合併例では,耳鼻咽喉科,内科系とも第2世代抗ヒスタミン薬+抗ロイコトリエン薬+鼻噴霧ステロイド薬の3剤併用が半数以上で,主薬は喘息合併例では抗ロイコトリエン薬が第2世代抗ヒスタミン薬に比べて多く半数を占めていた。通年性アレルギー性鼻炎合併例には3剤併用が多かった。

 なお,点眼薬の処方状況(複数回答)は,耳鼻咽喉科,内科系とも抗ヒスタミン薬がそれぞれ86.7%,77.6%と多かった。

有用な花粉防御対策はマスク,花粉対策眼鏡,空気清浄機か

 花粉防御対策について,「強く勧めたい」「勧めたい」の合計が8割以上であったのは「マスク」「ゴーグル・花粉対策眼鏡」,「空気清浄機」,一方で半数以下は「花粉防止スプレー」「鼻に塗って花粉をブロックするクリーム」「お茶」「サプリメント・栄養補助食品」であった
自由記載からは,「外出を避ける」「帰宅時に着替える,シャワーを浴びる,衣服から花粉を落とす」「生食による鼻洗浄」などの意見もあった。

舌下免疫療法は鼻閉患者,重症患者,若年患者への処方意向が強い

 舌下免疫療法を処方する患者について聞いたところ(複数回答),舌下免疫療法の講習会を既に受講した医師では「鼻閉型または鼻閉を主とする充全型の患者」「重症の患者」「若年の患者」などへの処方意向が強く,回答の8割を占めていた。内科系では,喘息合併例や通年性アレルギー性鼻炎合併例への処方意向が強いが,講習会受講者では少ない傾向にあった
診療している患者の中で,どのくらいの割合で処方する予定なのかを聞いた結果(複数回答),5~9%と10~14%の回答が多く,舌下免疫療法講習会を受講したことで理解を深めた結果,慎重になっていることがうかがえた。

 舌下免疫療法を実施するに当たって懸念される点については(複数回答),「長期間の治療継続が必要」「効果発現までの期間が不明」「患者により有効性に差がある」「患者の通院・服薬の中止」「副作用の発現」の回答が多かった。「副作用の発現」や「効果発現までの期間が不明」は講習会受講者の方が少なかった。

 舌下免疫療法を中断した患者が再開を希望した際,新たに初期から開始するタイミングについては(複数回答),回答にばらつきが見られたが,舌下免疫療法講習会の受講の有無で違いが見られた。「中止後から1カ月」は講習会受講者では30.9%と,受講予定の15.1%に比べて高かった。

 舌下免疫療法でアナフィラキシーなどの重大な副作用が発現した場合の対処法については(複数回答),(態勢・システムが整っている)病院に搬送するは8割であった。

 舌下免疫療法で懸念される点については,アナフィラキシーや口腔アレルギーの発現,説明にかなりの時間を要することや,継続的な通院などが課題として挙げられていた。

 また,舌下免疫療法を長期継続させるための工夫については,継続意思,中断した際のデメリットやアナフィラキシーに関する十分な理解が得られるように説明すること,午前中の通院,家族を含めた説明,病診連携,舌下免疫療法で軽快した実例を示すといった意見が見られた。

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