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花粉症と漢方治療

花粉症は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりを主症状としますが、この漢方医学的な病理は、体液の偏在(水毒)です。
鼻に過剰な水分が偏在して、鼻水や鼻づまりを起こします。鼻水は水分が多くて色のついていないさらさらのものです。
花粉症の最盛期から漢方薬を飲むよりも、季節の始まる前から飲み始めるのが、花粉症対策のコツです。
小青竜湯
(しょうせいりゅうとう)

花粉症の第一選択。花粉症の人の約7割に有効。水様鼻水、くしゃみ、泡沫水様痰などを伴う人に有効で、多くは顔色が優れず足が冷えています。アレルギー性結膜炎にも有効です。
麻黄附子細辛湯
(まおうぶしさいしんとう)
手足の冷える人の花粉症に有効です。この薬は水分を駆逐して、体を温める作用を持っています。この薬に限らず、花粉症に使う漢方薬は殆ど体を温める作用を持っています。現代医学においては体を温めて、花粉症を治すという発想は全くありません。
柴胡桂枝乾姜湯
(さいこけいしかんきょうとう)

小青竜湯では、鼻閉が取れにくいことがありますが、こういう場合は柴胡桂枝乾姜湯が有効です。顔が少し赤く足が冷えています。
苓甘姜味辛夏仁湯
(りょうかんきょうみしんげにんとう)

水毒体質が強いので、冷えっぽい顔色で、足の冷えにも強い。体力虚弱で、胃下垂や胃アトニーを伴うことが多い人に使用します。

花粉症の治療

1.発病を抑えるための治療
●体質改善の減感作療法
アレルギーの原因となる抗原を、注射によってごく少しずつ体内に入れていく方法で、抗原に対する抵抗力をつけるための治療法です。
まずは、診察を受けて原因となる抗原を突き止めます。
花粉症の場合は、原因花粉のエキスを使います。人為的に免疫をつくることで、アレルギー反応のおこりにくい体質にしていきます。
現在、根治が期待できる唯一の治療法です。
しかし、効果が現れるまでに通常3・4年かかります。日常生活に支障のない程度まで治る人はだいたい6割以下です。
●予防的治療
花粉飛散の1-2週間前から、医師の診察と指導を受け、抗アレルギー薬を予防的に服用しはじめ、花粉シーズン中も続けます。
これによって症状を軽くすることができます。
この治療法は、花粉シーズン中の他の薬の効果を高めるためにも有用です。
 
2.症状を抑えるための薬
●内服薬
抗ヒスタミン薬
一時的にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどを抑えるには症状の原因となるヒスタミンに拮抗する成分の入っている内服薬(抗ヒスタミン薬)を服用します。
抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気を催すことがあります。服用後は自動車の運転などは避けましょう。
抗アレルギー薬
ヒスタミンだけでなくロイコトリエンなどのアレルギー症状をおこす化学物質を抑える成分が入っています。
抗アレルギー薬は眠気を催すことが少なく、花粉飛散前からの予防的治療にも用いられます。
●点鼻薬(鼻用噴霧薬)
鼻水・鼻づまりを速やかに止めることができます。
鼻の粘膜の充血、腫れを抑え、鼻の通りをよくします。
点鼻薬は、眠気を催すことが少ないという利点があります。また、多くは定量噴霧器具で使われます。
血管収縮性点鼻薬
抗アレルギー点鼻薬
ステロイド点鼻薬
●点眼薬
眼のかゆみや充血を抑えます。
抗アレルギー点眼薬
ステロイド点眼薬
3.外科的治療
薬による治療で副作用の出る方や、減感作療法で効果の現れない方に有用。
●レーザー治療
トリクロール酢酸下鼻甲介粘膜塗布術
花粉症は、鼻や目の症状が目立ちますが、咳や喘息などの症状をひきおこす場合もあります。
花粉症を局所的な症状だけでとらえずに、気になる症状がある場合には、必ず医師に相談してください。
《参考》
レーザー手術(CO2) 有効率90% 再発率5%
下鼻甲介粘膜切除 鼻閉に有効 5年間で鼻閉に72%の有効率
電気凝固術 有効率100% 再発例はあり
トリクロル酢酸の塗布 鼻閉に対して有効率88% 14ヵ月で有効率86%

花粉症の外科的療法

内服薬や点鼻薬を使用しても一向に効果が見られない場合や、薬の副作用がある場合など
鼻粘膜に外科的治療を施すことも出来ます。
どの方法も腫れた鼻の粘膜を削ることで鼻の通りをよくするという目的で行われます。
レーザー手術
下鼻甲介粘膜切除
電気凝固術
トリクロル酢酸の塗布
気をつけなければいけないことは、術後2〜3週間は症状が悪化するということと
再発が必ずあるということです。
これは鼻の粘膜をいくら削っても体質自体を変えられるわけでないからです。
いずれの手術にしても、耳鼻咽喉科で十分相談・納得の上で行う必要があります。

花粉症の点鼻薬

点鼻薬(鼻用噴霧薬)はおおきく3つの種類に分かれます。
点鼻薬の特徴として、鼻水・鼻づまりを速やかに止めることができます。
鼻の粘膜の充血、腫れを抑え、鼻の通りをよくしてくれるのです。
点鼻薬は、局所的に噴霧することで眠気を催すことが少ないという利点があります。また、多くは定量噴霧器具で使われます。
血管収縮性点鼻薬
鼻の中の血管や粘膜を収縮させることで鼻の通りをよくします。即効性があり、自覚的には症状が軽くなったような感じになって、連用する人もいますが、この手の薬はリバウンドで効果が切れた後(使用を中止した後)更に鼻の中の粘膜が腫れるため、常用することはあまりお勧めできません。
抗アレルギー点鼻薬
内服薬の抗アレルギー剤と同じ様な効果がありますが、内服に比べ眠気が出難くなっています。使用回数を守り続けて使うことが大切です。
ステロイド点鼻薬
副腎皮質ホルモンが含まれています。
内服と違い血中濃度があがり難く、副作用の心配も少ないです。
ステロイドの強力な抗炎症作用により症状を改善します。

花粉症の内服薬

花粉症の対症療法(症状を抑える)内服薬としては大きく分けて二つに分かれます。
抗ヒスタミン薬
一時的にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどを抑えるには症状の原因となるヒスタミンに拮抗する成分の入っている内服薬(抗ヒスタミン薬)を服用します。
抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気を催すことがあります。
服用後は自動車の運転などは避けましょう。
抗アレルギー薬
ヒスタミンだけでなくロイコトリエンなどのアレルギー症状をおこす化学物質を抑える成分が入っています。
抗アレルギー薬は眠気を催すことが少なく、花粉飛散前からの予防的治療にも用いられます。

減感作療法

減感作療法は抗原特異的免疫療法とも呼ばれ、花粉の抽出液を、最初は濃度を薄くしたものを注射して、その後少しずつ濃度を上げたものを注射し、花粉抗原に対する防御する免疫を獲得させる方法です。
実際の方法は花粉症の季節の3ヶ月以上前からはじめ。2年以上続けることが必要です。注射の間隔ははじめの3ヶ月間が1週間に1回、次の2ヶ月間が2週間に1回、その後は1ヶ月に1回の注射となります。
この方法により鼻の粘膜にあるアレルギーの細胞が減少することが報告されています。
平成7年に行われた当時の厚生省の研究成果を見ると、スギ花粉症に対する減感作療法で軽症、無症状におさまった患者さんが80%以上おり、その高い効果が確認されました。2年以上続けた後にやめた場合でも、役70%の患者さんで効果が持続することもアンケート調査などで示されています。
減感作療法を行っている医療施設
〜慈恵医科大学花粉症のページより〜
※参考
新しい免疫療法として
�他の物質を結合させた修飾抗原による「免疫療法」
�注射ではない「新しい抗原の導入方法(特に舌下)」
�Tリンパ球のみが反応するペルチドによる「ペルチド免疫療法」
�最近のDNAと抗原がくっついた「DNAワクチン療法」
�アレルギー反応中の物質をブロックする「抗体療法」