「医療従事者のための基礎知識」カテゴリーアーカイブ

検査法

■検査法
●問診
年齢・性別・職業・症状の程度・発症年齢・好発期、合併症、アレルギー既往症、家族歴、過去現在の治療歴と経過など詳しく調査する。
問診表を用いると漏れなく行える。
また経過の観察には鼻アレルギー日記を用いるのが良い。
●鼻鏡検査
通年性アレルギー性鼻炎では、下鼻甲介の蒼白、浮腫状腫張、水性鼻汁をみるが、花粉症ではむしろ発赤を呈することが多い。他の鼻疾患、たとえば副鼻腔炎、鼻茸、鼻中隔彎曲症、急性鼻炎との鑑別、合併を知る上で重要な検査である。
●アレルギー性の診断
病気がアレルギーによって起こっていることを知るための検査
 鼻汁好酸球検査・・・・最重要の検査である
 血液中好酸球検査
 血液中総IgE値・・・・花粉症単独例では正常値のことが多い。高値は通年性アレルギー性鼻           炎。喘息、アトピー性皮膚炎の合併も考える。
●原因抗原の検査
誘発テスト以外の検査は、抗体を証明するものであって、必ずしも発症につながらない。したがって、好発時期など症状との矛盾がないことを確認する必要がある。
 皮膚テスト・・・・・皮内テスト、スクラッチテスト、プリックテスト
 特異的IgE抗体定量・・RASTなど
 鼻粘膜誘発テスト・・市販の誘発用抗原ディスクはハウスダストとブタクサのみである
●その他の検査
鼻副鼻腔X線検査・・・副鼻腔炎などとの鑑別に重要。アレルギー性副鼻腔炎の診断は鼻鏡検          査、症状と併せて行う

発症のメカニズム

■発症のメカニズム
遺伝的素因が重要であるが、感作素因は多因子的で、解明はまだ不十分である。
●感作
IgE抗体は抗原の鼻粘膜内侵入により、主として鼻関連リンパ組織内などで産生されると
考えられている。
抗原は抗原提示細胞に貪食され、これによって活性化された�型ヘルパーT細胞(Th2)と
Bリンパ球の相互作用が重要である。産生されたIgE抗体が機動粘膜に分布する好塩基性
メタクロマジー陽性細胞(好塩基球と肥満細胞)に固着して感作が成立する。
●発症
感作から発症にいたるメカニズムは不明な点が多い。ダニやスギ花粉の疫学調査では
50%前後の抗体保有率が示され、その30〜50%が発症すると考えられている。
●症状発現のメカニズム
抗体に特異的な抗原の鼻粘膜へのチャレンジによって、主として粘膜型肥満細胞表面で
免疫反応が起こり、ケミカルメディエーターが遊離する。このケミカルメディエーター
(ヒスタミン・ロイコトリエンなど)が標的組織を刺激して起こる局所アナフィラキシーが
鼻アレルギー症状をきたす。
〜即時相反応〜
ヒスタミンは知覚神経を刺激し、くしゃみ中枢を介してくしゃみ発作を起こす。同じ刺激は分泌中枢、副交感神経を介して鼻腺から鼻汁を分泌する。くしゃみと鼻漏は一連の反応と考えられる。ロイコトリエン、ヒスタミンなどは、鼻粘膜血管を刺激し、その透過性亢進、拡張、血流うっ滞などにより、鼻閉を起こす。
〜遅発相反応〜
即時相反応に続いて数時間後に起こる遅発相反応は、アレルギー性鼻炎で鼻閉という症状で発現する。
〜アレルギー性炎症〜
発作の反復により、好酸球、好塩基球、リンパ球などの炎症細胞浸潤が起こり、ここから放出される細胞内物質により悪循環が形成され、非特異的過敏性獲得、不可逆的粘膜肥厚などがもたらされて、重症化、遅延化、慢性化をきたす。

アレルギー性鼻炎の疫学

■疫学
全国調査による有病率
●通年性アレルギー性鼻炎・・・・・18%程度
●スギ花粉症・・・・・・・・・・・13〜16%
●スギ以外の花粉症・・・・・・・・10%程度
これら有病率は、地域・年齢・調査年度によって大きな差異が見られる。平成10年度の
全国調査による年齢差をしめす。年齢層別有症率のおよその目安となると考えられる。
さいきんスギ花粉症の増加が著明で、ハウスダストアレルギーは都市部ではややプラトーに
なり、町村部でなお増加傾向にある。

■アレルギー性鼻炎の定義■

■アレルギー性鼻炎の定義
鼻粘膜の�型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ・水性鼻漏・鼻閉を3主徴とする。
病名として、鼻過敏症、鼻アレルギー、アレルギー性鼻炎、さらに花粉症などが用いられる。
≪鼻炎の分類≫
1.感染性:a.急性鼻炎 b.慢性鼻炎
2.過敏性非感染性:
   a.複合型(鼻過敏症)
    1)アレルギー性:通年性アレルギー性鼻炎、季節性アレルギー性鼻炎
    2) 非アレルギー性:血管運動性(本態製)鼻炎、降参球増多性鼻炎  
   b.鼻漏型:味覚製鼻炎、冷気吸入性鼻炎、老人性鼻炎
   c.うっ血型:薬物性鼻炎、心因性鼻炎、妊娠性鼻炎、内分泌性鼻炎、寒冷性鼻炎
   d.浮腫性:アスピリン過敏症
   e.乾燥型:乾燥性鼻炎
3.刺激性:a.物理性鼻炎 b.化学性鼻炎 c.放射線性鼻炎
4.その他:a.萎縮性鼻炎 b.特異性肉芽性腫性鼻炎