股関節固定者の二次障害と人工股関節全置換術〈医療トピック〉

Restrictions on Social Activities and Total Hip Replacement in Patients with an Ankylosed Hip
二木 康之
FUTAGI Yasuyuki
佛教大学
Bukkyo University
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抄録
股関節固定者における二次障害と人工股関節全置換術の予後について考察した。股関節固定によって下肢の支持性は確保されるが、隣接諸関節に過剰なストレスが加わるために、時間の経過とともに腰痛症、膝関節症、反対側の股関節症を発症するにいたる。これらの症状はしだいに悪化の一途をたどり、社会活動の制限や生活の質の低下を招く。固定をはずして人工股関節へ転換した場合、筋力回復には長時間を要するが、予後は全体として良好である。人工股関節への転換術は股関節固定者における隣接関節症状緩和のための最も合理的な対処法である。
Until the late 1970s, arthrodesis of the hip was regarded as one of the most reliable treatments for septic arthritis or traumatic injury. However, with time, a fused hip is often associated with intractable pain in the lower back and knees, which leads to serious restrictions on social activities in ankylosed patients. In recent years, the conversion of a fused hip to total hip replacement has been attempted to relieve the pain in neighboring joints. Most studies have found that the long-term outcome of the conversion in terms of walking ability and pain is generally favorable. To relieve overstressing of the adjacent joints, the most logical solution is the conversion of a fused hip to total hip replacement. The adjacent joints should not be directly treated while the hip remains ankylosed.
収録刊行物
障害者問題研究 [収録刊行物詳細]
Japanese journal for the problems of the handicapped 35(4) pp.308-313 20080200 [目次]
全国障害者問題研究会

人工股関節 患者体内で破損(エキサイトニュース)

日本メディカルマテリアル(株)が販売した人工股関節大腿骨コンポーネントにおいて、破損事例が発生。同社によると、破損については人工関節のデザインの他、患者の生活様式や活動性、手術手技や外傷等の外的要因等種々の要因が働いているものと考えられるとのこと。ステムとのはめ合わせ状態が適切な場合、破損する可能性は極めて低いが、当該ロット製品については、はめ合わせが不適切な状態となる可能性が否定できないため、同社は該当製品を使用した全施設に対し、埋め込み済の患者に対する今後の観察を呼びかけることとした。
現時点において、上記と同様の、はめ合わせが不適切な状態となる可能性がある製品は、市場には流通していないという。
【発 表 日】2009/12/03

人工関節の潤滑性向上技術 官民で共同開発

人工関節の潤滑性向上技術 官民で共同開発   岡山日日新聞より

 岡山県工業技術センター(岡山市北区芳賀)は、人工股関節表面の潤滑性を向上させる加工技術をナカシマメディカル(同市東区上道北方)と共同開発した。磨耗の減少で耐用年数が大幅に伸び、製品の長寿命化が期待できるという。 ヒトの大腿(だいたい)骨と骨盤をつなぐ人工股関節の金属製骨頭(直径26ミリ)の表面に、超精密旋盤による切削加工を施した上で、大面積の電子ビームを照射。生体関節の表面と似た超微細なくぼみ(平均直径60ミクロン、最大深さ10ミクロン)ができ、そこに体液が貯留することで全体の潤滑性が向上する。

人工関節のゆるみQ&A

読売オンラインより
医療法人社団我汝会 えにわ病院院長
増田 武志氏
 北大医学部卒。北大医学部整形外科学教室助教授を経て現職。
■10年前に人工股(こ)関節手術を受けました。人工関節のゆるみが心配です。
?術後は健診欠かさず?
人工関節は、現時点で永久的なものはなく、常にその耐久性が問題となります。人工股関節は、骨盤(臼蓋(きゅうがい))にソケット、大腿(だいたい)骨にステムという人工物を挿入し、それらが新しい関節を形成します。
 骨と人工物をつなぐ方法は、骨セメントという接着剤を用いて固定するやり方と、骨セメントを用いないで、骨と直接結びつく人工物を用いる方法があります。それらの固定が、術後経過でゆるんでくることがあります。
■骨セメントを用いた固定法は不利ですか。
 骨セメントは人工関節の歴史上、大きな役割を果たしており、1960年、近代人工股関節の創始者と言える英国のチャンレー氏によって開発されました。現在も世界で広く用いられています。それが適切に使用されれば、心肺に危険はなく、人工関節の耐久性にも問題ありません。
■ゆるみをきたす大きな原因は何でしょうか。
 ゆるみは人工物の周囲の骨が弱くなって(骨吸収が生じて)起こります。そのような現象は、主に使用された人工物の摩耗をきっかけに現れます。最近は人工関節の素材が改良され、摩耗率が小さくなったので、人工関節の耐久性は向上しています。適切な手術手技で、しっかりとした骨に設置された人工股関節は、20年ないし30年はもつことが期待できます。
■ゆるんだ場合は痛みますか。
 ゆるみの初期は痛みを感じません。その診断は多くの場合、エックス線像によってなされ、人工物周囲の骨吸収像や人工物の移動(ソケットやステムのぐらつき)の所見がみられます。大事なのは、そのゆるみが進行性の場合、できるだけ早い時期に再手術(再置換術)をすることです。臼蓋や大腿骨がしっかりしているうちは、再置換術も比較的容易にでき、その成績も良好です。
 一方、骨の破壊がひどく、臼蓋や大腿骨の骨欠損が大きくなると手術自体も難しくなり、成果にも限界があります。その意味でも、人工股関節を付けた方は、定期健診を欠かさないで、術後の経過をよく観察してもらうようにして下さい。

人工股関節の耐久性向上

人工股関節の耐久性向上 金沢工大の新谷教授 衝撃吸収力2倍に
従来より耐久性に優れた人工股関節を開発した新谷教授=白山市の金沢工大八束穂キャンパス
 金沢工大の新谷一博教授(機械工学)は二十三日までに、衝撃の吸収力が高まり、耐久性に優れた人工股(こ)関節を開発した。高齢化の進展で関節症を患う患者が増加、人工股関節の需要が高まっており、新谷教授は「新たな人工股関節の製品化にめどがついた。臨床実験を早くクリアし、特に変形性股関節症で苦しむ患者の手助けをしたい」と話している。
 変形性股関節症は先天的障害として日本人に多くの患者がいるとされ、老齢化が進むと、大腿骨と骨盤をつなぐ関節部分に強い痛みが生じる。治療法としては障害がある関節部分を取り除き、人工股関節に入れ替える手術が有効とされている。
 人工股関節は大腿骨の役割を担う「ステム」と、骨盤でステムを受け止め、軟骨代替材として衝撃を吸収する「ライナ」と呼ばれる部品でできている。新谷教授によると、ライナと結合するステムの先端「骨頭」に最も力が加わり、骨頭の素材にセラミックスの一種「アルミナ」が使われている場合、歩行に耐えられず、破損することがあるという。
 新谷教授は、ライナの構造に着目した結果、超高分子ポリエチレンの単一素材であるライナの内部に粉末状の層を作ることで、現在使われている人工股関節に比べ、衝撃の吸収力を二倍に向上させることに成功した。
 研究成果は今月八日に都内で開かれた日本臨床バイオメカニクス学会定例発表会で報告した。同発表会の出席者からは「これまでの欠点をうまく改善させた画期的な人工股関節だ」との声が聞かれたという。

「私の年金 減らさない知恵」より

産経ニュースより
年金の話はとかくわかりにくいものです。それが障害年金となると更に情報が不足しています。
障害認定を受けたからといって、役所や社会保険事務所が「年金の手続きをしてください」なんて言ってきてくれるはずもありません。
年金をいただいたからといって障害に関わるさまざまな問題が克服されるわけではありませんが、少しでもよりよい生活を送る手助けとしては役立ってくれると思います。

■情報不足めげず請求を
 10月18日付「わたしの年金減らさない知恵」(下)で障害年金を取り上げたところ、多くの反響がありました。障害者の年金については、情報が少ないのが実情です。病院や自治体の窓口では一般に、年金に関する情報提供はありません。身体障害者手帳の交付を受けただけでは、障害年金の受給につながらないので、注意が必要です。(寺田理恵)
 「主人は2年前、心筋梗塞(こうそく)で倒れ、障害1級と認定されました。昨年62歳で亡くなり、社会保険庁に届けたときに、初めて障害者のための制度があると知りました。病気になってすぐ届けていれば、もっと高い年金が支払われていたはずと聞き、がっかりしたものです」
 東京都世田谷区の主婦、榎本美恵さん(62)=仮名=は、こう話す。
 夫は昭和19年生まれ。現役時代は厚生年金に加入しており、60歳から厚生年金の一部が支給され、62歳から全額が支給される世代。しかし、障害の状態が年金の障害等級で1?3級相当なら、特例として60歳から全額が支給される。
 夫の障害1級は、身障者手帳の等級。年金の障害等級ではない。年金の障害等級相当と認められるには、手帳の等級とは別に申請しなければならない。そうしていれば、夫は厚生年金の障害者特例の対象になったようだ。
 情報を得る機会がなかったばかりに、受給できたはずの年金を受け損ねてしまったのだ。
 「酸素療法と車椅子(いす)の生活となった主人を介護している間は、とても年金にまで気が回りませんでした。身障者手帳をもらったときも、年金のことは何も聞いていません。そのような情報を得る機会も少ないと思います」
 榎本さんのようなケースは少なくない。退院時に後遺症があっても、病院では障害者の年金に関する情報提供は行われない。自治体の窓口で身障者手帳の交付を受ける際も、同様なのが実態だ。
 「年金は、なるべく払われないようにされていると思えました」と榎本さん。

 一方、神奈川県横須賀市の大本弘志さん(74)=仮名=は榎本さんの夫と同じ障害1級。しかし、障害年金を受ける資格がないと、社会保険事務所でいわれた。
 「障害1級ですが、障害年金は受けられないのでしょうか。社会保険事務所では、言下に断られました」と大本さん。
 69歳から週3日、人工透析を受けている。そのため、障害等級1級と認定され、身障者手帳を交付された。すでに厚生年金を受けていたが、「障害年金が少しでももらえるか」と思い、社会保険事務所に問い合わせたのだった。
 窓口で「資格がない」と聞き、大本さんはいったん、あきらめた。しかし、なぜ資格がないのか、理由は分からないまま。「最近の報道では、役所側のミスで年金が受けられないケースもあるようです。同い年の家内も、今年から私と同じ状況。それだけに、本当に資格がないのか、気になっています」と話す。
 障害年金を受給するには、基礎年金の場合、原則として初診日が65歳未満にあること。厚生年金の場合は初診日が加入期間中にあることが必要だ。その上で、初診日から1年6カ月経過したときに1級または2級に該当するか、65歳前に該当することが条件。大本さんは障害の状態になったのが69歳だったため、基礎年金も厚生年金も条件を満たさず、「資格がない」とされたと考えられる。
 田中年金総合研究所の田中章二所長は「人工透析を受けている場合は、年金の障害等級2級に該当します。しかし、障害年金を受給するには、初診日がいつかが重要です」と指摘する。

 障害年金が分かりにくい原因の1つは、年金の障害等級と、身障者手帳の等級が一致しないこと。しかし、両者はしばしば混同されがちだ。
 障害基礎年金が受けられるのは、年金の障害等級が1級と2級の人で、該当するのは、かなり重度の人。身障者手帳の等級だと、おおむね1級に相当する。また、障害厚生年金は、1級、2級に加えて、比較的軽い3級の人も受けられる。
 心臓ペースメーカーを装着した人、人工透析を受けている人なども年金の障害等級に当てはまる。日本の透析患者数は年々増加し、平成17年には25万人を超えた。障害年金を受給できる可能性のある人は増えているはずだ。
 しかし、田中所長は「人工透析を受けていても、障害年金の受給に結びつけて考える人は少ない。幅広い場面での積極的な情報提供が必要です。また、障害年金が受給できるかどうかは、請求しないと分からない。請求が門前払いされることも多いので、専門家に相談するなど、簡単にあきらめないでほしい」と話している。

オーダーメードの人工股関節 石川県工試が開発

石川県工業試験場は、各患者の体形に合わせた人工股(こ)関節=写真=をつくる技術を開発した。衣服や靴などと同様、オーダーメード仕様で製品化でき、患者の骨に適した緩みにくい形状となる。県内の企業に協力を求め、実用化を目指す。
 コンピューター断層撮影(CT)で患者の骨などを撮影し、コンピューター上にデータを表示する。そのデータに基づき、チタン合金を加工することで、体形に合った人工股関節が出来上がるという。既製品の形状データなどを数値化する「リバースエンジニアリング技術」を応用した。
 金沢工大機械工学科の新谷一博教授、金沢医科大整形外科の兼氏歩講師が協力した。石川県工試は「人体の別の部分にも技術を応用し、新製品を開発したい」としている。