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2011年6月26日アーカイブ

平成23年6月23日

東京大学大学院工学系研究科(該当ページにリンクしています)

1. 発表者:
石原 一彦(東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻/バイオエンジニアリング専攻 教授)

2.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科石原一彦教授、国立障害者リハビリテーションセンター中村耕三自立支援局長(東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科前教授)及び日本メディカルマテリアル株式会社は、産学連携で石原教授の持つ生体親和型バイオマテリアル技術を利用した人工股関節の開発を行ってきたが、性能評価、安全性の評価が終了し、このほど、医療機器として製造販売承認され、今秋より臨床の現場での実用化にいたる運びとなった。

3.発表内容:
<背景>
高齢者人口の増加に伴い、関節の機能に支障をきたし、運動不全となる人口も増加してきている。現在、国内では年間4万件以上の人工股関節置換術が行われ、この件数は年々増え続けている。
疾患の初期段階では、薬剤療法などで関節の痛みや疾患の進行はある程度抑えられるが、激しい痛みなどで患者の生活の質が著しく低下すると、人工関節に置き換える処置など手術療法が選択されることが一般的である。人工股関節置換術は、患者の運動機能回復には大きな役割を果たす優れた治療法といえるが、人工股関節の寿命(耐用年数)を規定する「弛み」という深刻な合併症に対する決定的な解決策が得られていない。この「弛み」が起こると人工股関節を入れ換える(再置換)手術が必要となる。また、将来、再置換の繰り返しが必要となるような若年層の患者に対する適用も困難である。

「弛み」の過程は、人工股関節の関節面から発生する摩耗粉から始まる。免疫細胞がこの摩耗粉を異物として認識し排除する際に、破骨細胞を形成・活性化し、埋入された人工股関節の周囲の骨を吸収するため、「弛み」に至る。したがって、摩耗粉の発生を抑えることがこれまで大きな技術課題であった。摩耗粉は関節面を構成するポリエチレンから発生するため、ポリエチレンに高エネルギー線を照射して架橋・硬質化させるなど、従来から対策がとられてきたが、根本的な解決までには至っていない。

<新技術の特徴>
本技術は、石原教授の持つ生体親和型バイオマテリアル技術(人工細胞膜の構造を創るマテリアル技術)であるMPCポリマーで人工股関節の関節面を構成するポリエチレンライナー(図1)の表面を処理するものであり、これにより耐摩耗性の向上を実現した。
生体の関節軟骨表面にはリン脂質の組織化層が存在しており、この層により関節面が保護され、潤滑機構が保たれている。そこで本開発では、リン脂質構造を含み、生体親和性に優れているMPCポリマー(図2)に着目し、人工股関節のポリエチレンライナーの関節面に、ナノメートルスケールのMPCポリマーの層を形成した(図3)。
人工股関節の関節面に形成された人工細胞膜様のMPCポリマー層により、関節面には薄い水の層ができるため、生体の関節軟骨と同等の高い潤滑性が発現した。股関節シミュレーターを用い、1000万サイクルの股関節の運動を模擬した摩耗試験を行ったところ、未処理のポリエチレンライナーに比べて、摩耗量の大幅な低減が確認された(図4)。すなわち、人工股関節の寿命の延長が期待できる。
本開発では、2007年より臨床試験を実施し、安全性を確認した。臨床試験結果をまとめて薬事承認申請を行い、今年4月に医療機器として製造販売承認を取得した。この人工股関節は、完全に我が国オリジナルの研究成果であり、人工股関節の再置換手術の必要性を効果的に低減し、患者の生活の質の向上に貢献することが期待される。

<特記事項>
研究チームは、本研究成果により、「第25回(2011年度)独創性を拓く 先端技術大賞 経済産業大臣賞(産学部門・最優秀賞)」を受賞した。(受賞式:7月27日)(http://www.fbi-award.jp/sentan/jusyou/index.html)
・本研究は(独)科学技術振興機構(JST)の委託開発事業の支援を受けて実施された(平成17年度?23年度)。
・6月23日に日本メディカルマテリアル株式会社主催のメディアセミナーを開催し、広く情報の提供に努めることとした。

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