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【参考】下肢荷重検査における全人工股関節置換術前後の検討

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下肢荷重検査における全人工股関節置換術前後の検討
?対側股関節の病期の違いについて?
  正田 直之, 野形 亮介, 花木 このみ, 溝口 佳奈, 大森 弘則
   大森整形外科リウマチ科リハビリテーション部

【目的】
変形性股関節症に対して全人工股関節置換術(以下THA)
を施行することによって,術側下肢の荷重量や重心動揺性が経
時的にどのように変化するのか,また対側の股関節の状態によ
って,どのような違いがあるのかを下肢荷重検査を用いて検討
した.
【方法】
対象は,平成21 年8 月から平成23 年6 月までに当院で
THA を施行した末期の変形性股関節症患者で,下肢荷重検査
を術前より経時的に行った56 例(男性7 例,女性49 例,平均
年齢61.7±11.0 歳)である.なお,対側股関節のX 線学的病
期分類によって,対側が正常および前期・初期股関節症である
群をA群(26 例),進行期・末期股関節症である群をB 群(13
例),また対側に既にTHA が施行されている群をC 群(17
例)の3 群に分けた.検査にはアニマ社製G-620 の下肢荷重計
を用いた.患者に左右のプレート上に軽度開脚となるように両
足で立たせ,静止立位30 秒間で計測した.各々の症例に対し
て,術前・術後1 カ月および術後3 カ月の時期において,手術
側下肢の荷重率(術側への荷重配分:%),総軌跡長(重心点の
移動した全長:cm)および外周面積(重心動揺軌跡の最外郭に
よって囲まれる内側の面積:cm2)を測定し経時的に比較した.
なお,B 群では術後3 ヶ月時にはすでに対側のTHA が行われ
ている症例が多く,検討すべき術後3 ヶ月の症例数は得られな
かった.
【結果】
全症例の手術側の荷重率の平均値は,術前:44.6±7.3%,術
後1 ヶ月:49.1±6.2%,術後3 ヶ月:49.7±4.6%であり,術
前と術後1 ヶ月,術前と術後3 ヶ月の間に有意差を認めた(p
<0.01).総軌跡長の平均値では,術前:41.4±17.2cm,術後
1 ヶ月:45.2±19.3 cm,術後3 ヶ月:38.8±11.8 cmであり,
また外周面積の平均値は術前:1.8±1.2 cm2,術後1 カ月:1.9
±1.1 cm2,術後3 ヶ月:1.7±1.1 cm2 であった.術後3 ヶ月
以降に小さくなる傾向であったが,計測時期による有意差は認
めなかった.
対側の股関節症の病期別では,A 群の荷重率の平均値は,術
前:40.8±6.5%,術後1 ヶ月:46.34±6.3%,術後3 ヶ月:
49.5±4.9%であり,術前と術後1 ヶ月,術前と術後3 ヶ月との
間に有意差を認めた(p<0.01).A 群の総軌跡長の平均値は,
術前:42.5±16.2 cm,術後1 ヶ月:43.0±19.6 cm,術後3 ヶ
月:38.0±10.6 cm であり,A 群の外周面積の平均値は,術
前:1.9±1.1%,術後1 ヶ月:1.8±1.0%,術後3 ヶ月:1.6±
0.9%であった.B 群の荷重率の平均値は,術前:48.5±5.9%,
術後1 ヶ月:53.5±5.5%であり,術前と術後1 ヶ月との間に有
意差を認めた(p<0.05).B 群の総軌跡長の平均値は,術前:
41.7±23.3 cm,術後1 ヶ月:47.5±19.9 cmであり,B群の外
周面積の平均値は,術前:2.0±1.7cm2,術後1 ヶ月:2.0±
1.1 cm2 であった.C 群の荷重率の平均値は,術前:47.4±
6.9%,術後1 ヶ月:48.9±3.8%,術後3 ヶ月:50.0±4.7%で
あり,C 群の総軌跡長の平均値は,術前:39.8±14.0 cm,術
後1 ヶ月:46.7±19.8 cm,術後3 ヶ月:38.0±12.3 cmであり,
C 群の外周面積の平均値は,術前:1.6±0.8 cm2,術後1 カ
月:2.0±1.3 cm2,術後3 ヶ月:1.4±0.8 cm2 であった.
【考察】
全体として,手術側の荷重率は,術後有意に改善し,術後3
ヶ月以降で対側とほぼ均等(50%前後)になることがわかった.
総軌跡長や外周面積では,術後1 ヶ月で増加するが術後3 ヶ月
以降では術前よりも減少しており,有意差はないものの,術後
3 ヵ月以降で重心動揺性も改善する傾向が認められた.
対側股関節の病期分類では,A 群やC 群では前述の全体像と
ほぼ同じ傾向を示したが,対側が進行期?末期のB 群では,術
後1 ヶ月で対側よりも手術側の方により多くの荷重がかかって
おり,重心動揺性の改善もほとんど認めなかった.これは恐ら
く対側の股関節痛が術後も持続しているため,疼痛が軽減した
術側下肢に荷重がかかりやすくなっているためと考えられた.
また,「重心は脚長差の長脚側に移る傾向がみられた」との寺本
らの報告もあり,B 群では術側下肢が長くなる傾向が強いため,
脚延長に伴う脚長差が荷重率を増加させていたのかもしれない
と思われた.
【まとめ】
変形性股関節症に対しTHA を施行することによって,左右
均等な荷重率を獲得できることがわかったが,対側股関節が進
行期?末期の症例の場合やや傾向が異なっていた.また総軌跡
長,外周面積においても有意な変化が認めなかったことより,
今後も症例数を重ねてより長期に検討する必要があると思われ
た.

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